6月1日(木) まぼろし商店街に辿りつけない

 薄曇り、26℃。

 午後2時過ぎ、赤坂の代理店へ。2年ぶりに訪ねたのだが、若いクリエーターの活気がロビーにも溢れていた。自信満々、オレがオレがの自己主張の空気がまことに息苦しい。某社の雑誌広告の打合せ、1時間ちょうど。事前に聞いていた掲載媒体のセレクトが突飛で、クライアントが何を意図しているのか困惑したのだが、内情を聞いて納得。ただし、化学メーカーのため法務チェックが超絶厳しい。クライアントが何月に掲載させたいと希望しいるのか分からないが、仮に8月だとしていも時間がない。さて、どうすればいいのやら。

 代理店でデザイナーと分かれ、しばらく忙しさにかまけて散歩さえしていなかったこともあり、赤坂の裏町を散歩しながら青山に向かうことにする。20代を赤坂の端っこで過ごしたもので、ふと、あの小さな商店街はどうなっているのかと思ったのだが、道1本違っていたようで辿り着けなかった。ただ、緑と坂道が多い街は気持ちがよく、行き交う人も上品で、なんだか気持ちがいい。もう一度打合せがあったら、また、ふらつくのもいいな。

 早めに夕食を済ませて、夕方から原稿書き。が、またも不動産パンフレットの構成変更の連絡が入り、新たな原稿書きをするハメに。いつになったら手が離れるのやら。まったくなー。

 
6月5日(月) 茅場町で方向感覚を失う

 晴れて、26℃。

 午後3時、茅場町のクライアントにて打合せ。余裕を持って出たのだが、目指す方向が分からない。あるはずの高速道路が見当たらない。頭の中の地図を頼りに歩き始めたのだが、やはり目印にしていた建物の姿が見えず。不安になってタクシーを拾ったら、先ほど歩いた道と行くべき道が平行の位置関係にあり、300mも走らないうちにクライアントのビルに到着、事無きを得る。打合せ1時間。広告で伝えるべき内容はあまりなく(販売会社に対してアリバイ証明のための広告だった)、媒体選択など不安なところもあり、その場では出来上がりのイメージがまったく湧いてこなかった。さて、どうしたもんだべか。

 ビルを出ると陽射しも風も強かったが、湿度が低く、実に気持ちがいい。梅雨まではあと何日あるだろう。それを思うと、すぐさま地下鉄に潜るのが惜しい気がして、ひと駅歩いて日本橋から地下鉄に乗って帰宅する。

 夕方から某社ホームページのコンテンツを書き進める。最終的な文章量はおそらく3万字にはなるだろう。現時点ではまだ1割も出来ておらず、やれやれという感じ。今年の梅雨と夏は、ここに集中、いいものを作らないといけない。頑張らなくちゃ。


6月7日(水) 梅雨入りで傘を買う

 曇り後、雨。22℃。

 朝から空がどんより。バタバタと広報誌用の原稿を書き、4時過ぎにアップ。5時過ぎに外出、6時から赤坂の代理店にて雑誌広告の打ち合わせ。1時間でアイデアをまとめ、代理店を出る。本屋で20分ほど雑誌を眺めてから地下鉄に乗ったのだが、折悪しく参宮橋駅を出ると雨が降りだしてきた。こういう時に限って傘を持って外出しなかった自分が腹立たしい。駅前の中華料理屋で雨宿りがてらに塩ラーメンを食べて夕食をすましたが、それでも雨足は強くなるばかりで、埒が明かない。ドラッグストアでビニール傘を買って帰宅する。どうやら関東地方は梅雨入りしたとか。どうりでねぇ。

 打ち合わせ内容に従って広告のコピーを書き、目処が付いたところで、ホームページのコンテンツ書きを再開する。が、夜10時半を回ったところで不動産パンフの直し、それも結構な量の直しが入ってきやがった。事情を聴くと、担当の気が変わったのだとか。バーカ、と言ってやりたくなる。来週早々に下版だというのに、何を今さらやっているのだ。ムカっ腹が立ったが、そんなことにかまけていられないぐらい時間がない。2時間半集中し、夜中の1時半になんとか原稿を送ることができた。安心したものの、同時に腹立たしい思いが沸々と湧いてきた。くっそー。

 
6月14日(水) やっとカメラマンが見つかる

 薄曇り、24℃。

 朝10時半、ちょうど1週間前に訪ねた茅場町のクライアントを再訪、雑誌広告のプレゼンに参加する。薬品がらみの会社はどこも法務チェックが厳しいもので、社内であっても手加減しない。こちらもそのあたりの事情は変わらず、うかうかしていると掲載が秋になってしまいかねない。という複雑な背景から、こちらの提案して案を見比べ、審査が長引きそうなものから1つ2つと除外していき、1時間かけて2案に絞って最終プレゼンすることになった。あー、社内事業の面倒くさいことよ。

 昼ごはんには少し時間があったが、日本橋までゆっくり歩いてちょうど12時。大通りから1本折れた細道に次々お客が入っていく小料理屋を見つけ、そこで一本アナゴ焼き入り、海鮮丼を食べる。アナゴはまあまあだったが、刺し身が今一つで、ちょっと残念な味。

 来週はとある企業のホームページのため東北を取材することになっている。いつもなら東京からカメラマンを連れていくところだが、なにぶん現場が広域に点在していて、いつものやり方だとギャラがバカ高くなってしまう。そこで、現地に暮らすカメラマンを起用する方針に転換したまでは良かったが、第一候補から丁寧なお断りのメールをいただいてしまった。なんとか見つけることができた第2候補にドキドキしながら連絡すると、待望の返信メールをいただいた。なんとか受けてもらえそうな感触で、胸をなで下ろす。あー、よかった。ほんと、この手の仕事は原稿書きより疲れてしまう。

 さて。夕方からは、その関連のエネルギー関係の下調べと原稿書き。淡々と書き続けているのだが、この1週間で2合目に辿り着いた自信もなし。今月末までには第1稿を上げなくてはいけないのに、困ったなー。

 夜中1時半に、仕事をギブアップ。ウイスキーを飲んで2時半就寝。


6月16日(金) 代々木上原・虎の子10周年、ありがとう!

 晴れて29℃。梅雨らしくないけど、まあ、いいか。

 朝から原稿書きを延々と。腹が立つほど原稿が進まなかったが、8時過ぎに店へ向かう。本日、虎の子代々木上原店は10周年。溢れるほどお客さんが入り、にぎにぎしく大宴会が開かれていた。H先生よりハモン・イベリコ1本、大常連Nさんよりキャビア20人前(こちらは食べてはいませんが)を差し入れていただき、ピアニストIさんはピアノを生演奏してくださった。ありがたいこと、ありがたいこと。

 今月より中に入ったAくんの前の店のお客さんが来たり。地下のバーの店長が女の子と来てくれたり。A子さん自慢の美人の娘が来てくれたり。下北沢時代からのJちゃん、Tちゃんが来てくれたり。お陰様で近年にはない賑わいになった。ご来店いただいた皆さん、本当にありがとうございました。今後ともぜひ虎の子をお願いいたします。

 Aくん、溢れるほどの皿と鍋とグラスの洗い物と格闘すること、3時半過ぎまで。タクシーに乗って帰宅したら、4時になっていた。なんと朝日が目に染みることよ。


6月19日(月) 飛行機に乗り遅れさせてしまう

 晴れて25℃。秋田の話ですが。

 某社ホームページの取材のため、朝8時前の飛行機で羽田から秋田へ。同行するデザイナー氏と7時過ぎに待ち合わせをしていたのだが、こちらが第2ターミナルを第1ターミナルと伝えてしまったために移動しますとのこと。申し訳ない。が、出発まで30分あるので余裕だろうと思っていたのだが、10分経っても20分経っても姿を現わさない。とうとう最終のご案内とアナウンスが入り、しぶしぶチェックイン。そこからゲートまで500mほどを走る、走る、走る。なんとかバスに乗れたので(地方空港行きはバスで飛行機まで行くのですよ)電話をすると「駄目でした。乗れません」とのこと。やっちまいました。

 空港からレンタカーに乗るつもりだったが、バスで駅へ。そこからタクシーに30分ほども乗ってやっと営業所に到着する。さっそく30分ほど取材していたら、デザイナー氏から次の便に乗れましたとのメールを着信。安堵する。昼食をはさんで3人にお話を伺う。皆さん、人柄がよく協力的で、ネタになりそうな興味深い話がいろいろ伺えた。以後、撮影場所をロケハン。なかなか絵になりそうなところが少なく、悩ましい。7時前にホテル到着。朝食が旨いと評判だったので選んだのだが、とんでもない古さで、ウォシュレットもなければ、ヒゲ剃りもない。今どきこんなビジネスホテルがあろうとは。

 打ちひしがれて地元客が多そうな居酒屋に入ったが、見かけと違って秋田名物らしきものが比内地鶏ぐらいしかない。魚も今ひとつの鮮度で、酒を飲まないデザイナー氏が最後に頼んだ焼きそばは到底プロの味ではない。勘定は安かったが、それ以外は褒めるところが何もなかった。レジ前に来店した有名人の色紙が貼ってあり、お金持ちの美人と結婚したバイオリニストが店主と一緒に撮影した写真もあった。極楽のような時間を過ごしたかのように満面の笑みを浮かべていたが、一体何を食べたらこんな顔ができるのか。狐に騙された気分になった。


6月20日(火) H.Tの笑顔にイラッとする

 薄曇り、27℃。今日も秋田の話ですが。

 朝イチ、秋田県北部をロケハン。予想外に絵になる場所が見つけられ、昨日ブチブチ言っていたデザイナー氏の機嫌が直る。8時過ぎにホテルに戻って、普通すぎるほど普通の朝食を食べる。10時に秋田県在住のカメラマンとロビーで打ち合わせ。直接お会いするのは初めての女性だったが、数年前まで東京でカメラマンをしていたので話が分かりやすく、助かる。ギャランティもなんとか飲んでもらえた。

 以後、再びロケハン。が、曲がる場所を間違え、地元の人も行かないような山道に分け入ってしまう。「熊が出てきそうだねぇ」「最近多いですもんね」「今どきの熊は人が来ても逃げずに、待っていてガブリとやるんだってよ」「あんなに元気だったのに、なんて葬式に言われたりしてね」などと車中はずっと二人でバカ話をしていたが、一人だったら恐怖に挫けてそのまま帰っただろう。国道まで戻り、営業所の方に電話して正しい道を教えてもらうと、数キロも違っていた。あー、やっぱりね。次の場所も見ておきたかったが、昨日の今日なので、今度はなんとしても飛行機に遅れるわけにいかない。で、空港に戻る道すがら、秋田ラーメン(支那そば)を食べることにした。が、期待はまたも裏切られ、コクがまーったくないただ味が薄いだけのラーメンを食べるハメになった。秋田の人よ、それでいいのか。腹が膨らんだだけで、不完全燃焼で終わってしまった。店の外に出ると、ここにも上機嫌のH.Tの写真が……。イラッとする。

 6時ちょっと前に帰宅。シャワーで汗を流し、メールを返して7時前に新宿へ。3年ほど続けている某クラブのPR誌の打ち上げに参加する。指定された会場は甲州街道下だったが、はて、そんなところに店があった記憶がない。が、グイグイ進むと、香港のようなランタンがぶら下がっている店が見え、中に入るとそこはカオスだった。テーブルには舟盛りの器に中華饅頭と春巻き、駄菓子屋のお菓子が並び、何や何やら説明がつかない。が、目新しいスポットは若者でごった返し、オッサンとしては苦笑いを浮かべるしかない。寝不足、筋肉痛で早く家に帰りたかったが、ゴールデン街に連れていかれてしまい、何とか帰ったのが12時。はー、疲れました。


6月28日(水) 能登の山で道に迷う

 薄曇り、25℃。今日は能登の話です。
 
 先週に引き続き、朝8時50分の飛行機で羽田から能登へ。カメラマンの撮影に付き合う。お任せでお願いしようかとも思ったが、ネビに表示されない可能性がある場所に一人で行かせるのは忍びなく、今回は自腹で同行する。
 
 のと里山空港という1日に2便しか到着しない空港から、目的地までナビで入力すると1時間あまりのルートを表示された。東京は小雨だったが、まずまずの晴天で助かる。地図で確認すると近道がありそうだが、そちらは無反応。しぶしぶナビに従う。細い山道をクネクネと進み、ところどころ道に迷いつつ、昼前になんとか目的地に到着することができた。場所が場所だけにいろいろな方向から撮影ができず、カメラマは苦戦する。2人とも朝から何も食べていなかったので、道の駅で昼食(サザエカレーが旨かった)。以後、夕方まであらかじめチェックしていた場所に移動しながら撮影。能登は住民の皆さんが心がけているのか、浜を除いて道路にゴミが落ちておらず、無粋な看板もない。清潔な佇まいが守られているのだが、ただ人がまったく歩いておらず、生活感がない。それでいて、10年前の能登地震で落ちた瓦が新品と葺き替えられらしく、小屋の屋根までピカピカ。清潔なゴーストタウンに紛れ込んだようだった。
 
 夕景狙いで昼に行った山頂を目指したが、見事に道を見失う。誰も行き来しない道は草で半ば覆われ、それが車体を叩いてまことにうるさい。が、どうしても目的地に至らず、元の場所に戻り、2度目のトライでやっと見つけることができた。もしも雨が降っていて、1日だったら、どうたっただろう。自腹は痛いが、カメラマンに甘えなくてよかった。
 
 7時過ぎに民宿に到着。新鮮な刺し身と野菜の天ぷらで疲れを癒す。1泊2食で6000円。日本酒1杯300円。文句の付けようがない。まだ手応えのあるカットは押さえられていないが、まあ、明日一日ある。この仕事はスタッフのキャスティングも含めて順調にきているので、運を信じることにしようと思う。