12月1日(木) 酒を飲んだ後に走ってはいけません

 曇って16℃。  

 朝から新規案件の初回プレゼンのため、探し物をいろいろ。今日はアウトラインを固めるつもりだったが、友人デザイナーから夕方電話がかかり、「時間ができたから一杯どう?」とのお誘い。来年はこの友人と組むケースが増える予定で、いろいろ確認しておきたいこともある。酒の飲みすぎで若干胃が痛かったが、6時に代々木で待ち合わせをした。会うのは1年2カ月ぶりか。友人は気掛かりだった難しい病気が再発することもなく、元気そのもの。性格はいいやつだが、からみ酒が多く、それで敬遠する仲間もいた。が、今日は最後までそういうことがなく、仕事やプライベートなことまで腹を割って話せた。距離を置いた時期もあったのだが、そのときにどんなことを考えていたかも、洗いざらいしゃべった。30年以上の付き合いだが、ここまで気持ちが通じ合ったことは初めて。うれしいなぁ、まったく。ご機嫌な友人のゴチになり、10時すぎに別れる。

 途中から酒に飽きて水を飲んでいたこともあり、自分的にはシラフ。で、風も暖かかったので、11時半に近所をウォーキングした。4.5キロほどの距離を小一時間。じんわり汗がかけて気持ちがよかった。シャワーを浴びてぼんやりしていたところにツマが帰宅し、酒&ウォーキングの件を話したところ、呆れられてしまう。まあ、そうでしょうな。

 今年もあと1カ月。この勢いが来年につながりますように。


12月5日(月) 熱燗が旨いなぁ

 昼間はポカポカ、18℃。夜は冷えました。

 朝イチで、某カタログのプレゼン用コピーに手を加えて確認した後、メール。ディレクター氏から早い上がりに感謝される。が、原稿を書くうちに疑問の個所がいくつかあった。この手のものは早めに解決しておかないと、後になって厄介なことになる。改めてディレクター氏に連絡し、夕方時間を取ってもらうことに。で、18時から1時間半、みっちり打ち合わせ。あーだこーだやり取りしながら、企画のコンセプト、取り上げる商品周りの情報などを2人の間で改めて決めた。クライアントの2つのセクション、そこに外部企業が絡み、それぞれ自分のところの商品を売りたいが、面倒な目には遭いたくない。針の穴に糸を通すような大変さがあるが、初めてやる仕事はだいたいそんなものである。コピーライティングは一からやり直しだが、いいものにできるなら苦労でもなんでもない。

 冷え込んできたので燗酒でもと思い、その足で虎の子へ。が、木曜日、土曜日と走った疲れに加え、今日は若干寝不足気味。1時間半ほどで切り上げ、店を出た。もう少しペースを上げたいけれど、こちらの都合に仕事は合わせてくれない。まあ、地道に準備するしかない。


12月9日(金) 応挙の描写力に言葉を失う

 快晴17℃。暑いぐらいでした。

 飲食関係のPR誌の区切りがついたばかりのタイミングで、先だって別クライアントからアルコール飲料関係の案件が舞い込む。何たる偶然。それとも神様の思し召しか。おかげでこの1週間は、ずーっとワインの本を読み続けている。最初は本を読むだけだったが、どうにも頭に知識が染み込まない。そこで、本を読みつつ細かくメモを取るようにしている。もともと筆圧が高い上に長時間書き続けているため手首が痛いが、やむを得ない。

 昼近くに、その案件を依頼していた代理店ディレクターより、さらに興味深い展開になったことを聞かされる。スケジュールは多少遅れることになったが、企画の持っていき方しだいではクライアントとは太いパイプができる。企画を練り上げるのはこれからながら、期待が膨らむ。

 予期せず時間ができたため、午後3時、以前から行きたかった「円山応挙『写生を超えて』展」を青山の根津美術館まで出かける。東京国立博物館や国立新美術館に比べるとずいぶん小ぶりの美術館だが、そのぶん来場者も少ないため、近くから応挙の有名な作品を間近で観ることができた。展覧会のタイトルがある通り、応挙の写生力は道具が発達した現代人も遠く及ばず、草花の葉脈や野鳥の柄も息を飲むほど精巧である。その手控えを後年になって絵に仕立てている作品も多い。重要文化財の「藤花図屏風」「雲竜図屏風」「写生図鑑」はことごとく素晴らしい。が、度肝を抜かれたのは、「七難七福図巻」という、経典に説かれている世界をリアルに描かれた大作だ。前半は悪いことをするとこうなるぞという戒めが描かれている。鷲に赤ん坊をさらわれて半狂乱になっている若い夫婦、雷に打たれて倒れている娘、山道で狼に襲われる旅人などを描いた、天災や禽獣による害を描いた巻。どんな科なのか、打ち首、水責め、磔にされたり、火あぶりになったりする姿を凄惨なまでに描いた刑罰の巻。そして、貴族の祝宴、子供たちの船遊び、年貢収めなどを描いた福の巻。これを見せられたら、間違いなく真っ当に生きなくてはと思っただろう。知らなかった円山応挙の世界を、1時間半堪能した。あー、幸せ。

 その足で表参道交差点を越え、イルミネーション瞬く通りを散歩がてらに原宿駅まで。新宿の小田急でサイズ直しを頼んでいたパンツをピックアップして帰宅する。来年は忙しくなりそうだが、この12月は嫌になるほどドヒマな毎日。体はらくちんだが、心境はチョー複雑である。神様、もうちょっとお仕事を振ってください。 


12月10日(土) 蕎麦屋の燗酒で暖を取る 

 快晴12℃。こんなものです。

 日差しが暖かかったので、いつものように近所をゆったり走る。風は強いものの、寒さはさほどでもない。代々木公園下の銀杏並木がきれいで、目が和んだ。

 夕方、ツマと外出。新宿駅南口の紀伊国屋書店に替わってオープンしたニトリを覗いてみる。どれもこれも信じられないほどの安さで、頭が混乱する。今までの値段はなんだったのか。ソファは買うつもりにはならないが、デザインや素材を気にしないものならここで十分かなと思ってしまう。ふーん、なるほど。

 サザンテラスのイルミネーションをちょっとだけ見て、とある蕎麦屋へ。すっかり冷えきった体を熱燗で温める。あー、極楽、極楽。肴もいろいろ気が利いている。ツマは好みの蕎麦ではなかったそうだが、こちらは十分。趣味蕎麦ではなく、飯代わりの蕎麦はこういうものだ。いいところを見つけた。蕎麦屋で長っちりは野暮。そのまま参宮橋に帰る。馴染みのバーはあいにく休みのもようで、スーパーで買い物をしただけ。穏やかな土曜日でございました。


12月15日(木) 振り込め詐欺に間違われる

 晴れて10℃。うー、さぶ。

 某社から振込みがあったのだが、中途半端な金額で妙に多い。昨日通帳を記帳するとやはり13万円余りも多かった。このお金があれば……と思わないこともなかったが、そんなことができるはずもなく、駅前のATMに向かった(M銀行のインターネットバンキングは未だMacが使えない!)。幸い順番待ちは少なかったのだが、ブースの隅に図体の大きい男が突っ立ていて、それがちょっと薄気味悪い。で、こちらの番が来たのでスマホ片手に振込みの手続きをしていると、その男がそばに寄ってくるではないか。なにごと? で、警察手帳を出し、「代々木警察ですが、もしやと思いますが、振り込み詐欺ではありませんか」と訊いてきた。え? そうか。どうやらスマホで口座番号を確認していたものだから、振り込め詐欺の被害者かもと思われたらしい。たしかにトシは喰ったが、そこまで老人には見えないだろうに。やれやれ、まったく。

 夕方、新宿の伊東屋で用事を済ましていると、先だって納品したばかりの商品カタログの競合企業がそっくりのカタログを作ってきた旨の連絡があった。ダウンロードして見ると、商品特徴もカタログのデザインも言葉づかいも似ていて、怖いほど。なんという偶然だろう。こちらのせいではないが、年が明けたら速やかに対応することになりそう。こういうこともあるんだなぁ。自宅に戻って新規案件の資料読み、いろいろ。勉強のためノートにメモを取っているのだが、それも2冊目。だいぶ飽きてきた。


12月22日(木) 原稿を書いて風邪を引きそうになる 

 曇のち雨で、20℃。年末だというのに、どうしたものやら。

 新聞を取りに行くと空気が生暖かく、春のようだった。朝から某麺屋さんのお中元用カタログの原稿書き。引き受けるのは4回目なのだが、やるたびに納期が早まり、今回はとうとう1月納品になってしまった。何の因果で、こんなスケジュールになるのか。プロだろうと、なかろうと、寒いものは寒い。風鈴や冷えた西瓜や青畳や団扇を想像しようとしも、限度がある。原稿を書きながら、風邪を引きそうである。

 午後3時から、今回のカタログに絡んで料理研究家を取材。某麺はなぜおいしいのかについて解説してもらったのだが、説明がとても分かりやすい。こちらも食の現場を数多く踏んできたが、専門家は視点が違い、実におもしろい。が、あまりに理路整然として無駄がないため、20分ほどで聞きたいことが全部聞けてしまった。それで帰ったいただくのは気がとがめ、カタログとは直接関係ない脱線話で間を持たせた。冷たい麺を温かい汁で食べるとなぜ美味しいのかとか、小さな子供はなぜチュルチュルしたものが好きかとか。これまた説明が巧く、頭の中にスーッと情報が入ってくる。なるほど、なるほど、そういうことでしたか。帰宅して、別カタログの巻頭に載せる役員コメントをリライト。原文はクラクラするほどの拙さだったが、2時間文章と格闘して、なんとか差し障りないレベルにブラッシュアップして送信した。

 本日は年内最後の3連休の前日。仕事がスパッと終えることができたことだし、虎の子で牡蠣ナイトを開くというので、夜9時近くに店に向かった。店内はほぼ満席。某商社を辞めて医大に入学することが決まったK君、仙台から仕事をからめて上京したT君ほか、ほとんどがご常連さんで席が埋まっていた。また、牡蠣は長崎の有明産。牡蠣のイメージがなかったが、いただいた5種類がいずれも美味。今年一番の美味しさだった。恐れ入りました。

 12時過ぎ、先に出たT君を追って下北沢の居酒屋へ。T君、お世話になった方が急逝されたそうで、むせび泣いていた。こちらは、同席した元気いっぱいの女性の皆さんとあーでもない、こーでもないの話をいろいろ。独り、いい気分になっていたと思って時計を見たら、いつしか3時過ぎ。いつもよりハイペースだったのがたたり、寝落ちしたらしい。ほんと、酒に弱くなったものである。


12月29日(木) 虎の子納会!

 曇って8℃。寒いけれど、年末らしくて大いに結構。

 本日、虎の子は年内営業の最終日。私メも同じで、窓掃除をし、年賀状を書き、仕事の原稿を再度推敲して業務終了。20時過ぎに虎の子に向かう。ビル1階入口には、Oくんから贈られた門松が置かれていた。これなら年神様も迷わず来てくれるだろう。

 カウンターのご常連さんにご挨拶。Sさんから、上物の日本酒の差し入れがあった。すこぶる美酒で、ありがたし。9時近くになって、年をまたぎ銀座松屋で金継ぎの個展を開いているSさんが来店。初の個展の開催がご自分でも気付かないうちにプレッシャーになっていたようで、頭に帯状疱疹が出て、医者からアルコールは3週間禁止を言い渡されたとか。カルピスソーダ割りを飲む姿がちょっとほほ笑ましい。個展の方、金継ぎは仕上げた器が依頼主に還るだけなので、展示する作品も依頼主からお借りしたものがほとんど。そこで何らかの売上が得られるわけではないが、多くの人の目に触れれば新しい出会いが必ずあるもの。自分の作品の力でそれができるのは、羨ましい。

 Sさん10時にお帰りになり、その他のお客様も三々五々ご帰還に。本当は早い時間のうちからお手伝いに入るはずのSくんと少し飲もうと思っていたのだが、年末納品予定の仕事が運送トラブルで遅れに遅れ、いつまで経っても顔を見せない。このところやや寝不足気味だったため辛抱できず、12時に店を後にする。

 本年も虎の子をご愛顧いただきまして、ありがとうございます。無事15周年を迎えられたのも、ご常連様のお引き立てがあればこそと、感謝しております。来年はさらに居心地のよい酔い処を目指してまいりますので、なにとぞご贔屓のほどよろしくお願いいたします。