10月2日(日) 銀座で目を洗う

 何週間ぶりだろ、晴れました。28℃。

 朝、カーテンを開けると久しぶりの晴れ、晴れ、晴れ。ありがたや、ありがたやである。昨日の酒が残っていたが、気温が高くなるにつけて抜けていき、仕事がサクサク進む。気分をよくして、夕方、友人が金継の作品を出品している展覧会を観に、銀座の松屋まで出かける。布、器、金工、竹細工、紙などなど、会場にはさまざまな工芸作家の作品が並べられており、美しさ、緻密さに目が洗われるようだった。各地の和紙が集められたコーナーがあったが、美濃紙がひときわ薄い。以前、民俗学者の方がガラスがなかった時代、美濃紙は明かりとりをするため戸に張られていたと言っていた文章を目にしていたが、その意味がよくわかった。友人の作品の前にも足を停めて見入る人が多く、地に足が付いた仕事をしている彼が羨ましかった。

 会場を後にしたのが6時過ぎ。酒飲み心がくすぐられたが、こんな早い時間からは飲もうだなんて、そうは問屋が卸さない。帰宅して、以後、夜中まで仕事。1時過ぎに帰宅したツマといつものように「真田丸」の録画を観ながら酒を飲み、2時半にベッド。忙しいんだか、閑なんだか、自分でも分からなくなりました。


10月5日(水) 病院で3時間半過ごす

 曇って26℃。蒸しますなぁ。

 朝イチ、この1年3カ月ほど悩まされているアレルギーの原因を調べてもらいたくて、西新宿の大学病院へ向かった。予約した20分前に到着し、名前を呼んでもらうのを待っていたのだが、いつまで経ってもナシのつぶて。しょうがないので、スマホで著作権切れの文学作品が無料で読める「青空文庫」をチェック。先々週からNHKでやっているドラマ「夏目漱石の妻」が面白かったので、ならばと「わが輩は猫である」をダウンロード。中学か高校のときに読み、ストーリーをおぼろげに覚えていたせいもあるが、長い長い待ち時間にけっこうページが進んでしまった。

 11時で予約してあったが、やーっと診断を受けられたのは12時20分。地元の皮膚科の先生とはまったく違う見解で、そのまま処方せんを書きそうな流れに。それではわざわざ来た甲斐がないので、こちらの方から原因を調べてほしいと伝え、来週生検をすることになった。その予備診断やら1週間の注意事項なんぞを聞き、血液検査などをして、会計のフロアに下りたら、13時半を回っていた。で、別の建物に入っている薬局で、さらに30分待たされ、結局、3時間半も病院で潰されてしまった。ランチを新宿で食べるつもりだったが、とっくにランチタイムは終わっており、松屋で丼物を食べて帰宅する。

 以後、夜まで建築関係のカタログ書き。プロデューサー氏がしつこくチェックを入れてきたが、なんとか山を越せそうな気配。別の不動産広告はOKだったのか、知らせがないのは良い知らせと思い込み、1時には仕事を切り上げる。


10月7日(金) 歩きすぎて足を痛める

 曇って25℃。ぐっと秋になってきました。
 
 朝から建築関係のカタログ書きの続き、午後早々にOKをもらう。それと入れ違いに某社の株主通信の修正原稿依頼がメールで入り、これもサクサク書き上げて夕方には送ることができた。なーんか、できすぎな感じ。明日からは今年初めての3連休である。うれしー。

 7時過ぎに外出、歩いて新宿のブックファーストまで。紀伊国屋新宿南口店がなくなって近場では一番大きな書店になったが、ここの難点は棚が高くて照明が暗いこと。紀伊国屋のように落ち着いて本が読めないので、なんとなく気分が急かされてしまう。縄文時代について書かれた本に気が引かれたが、売れない学術本はおしなべて値段が高く、もしかして図書館に在庫がないか、もう一度チェックしてから決めることにする。

 久しぶりに荒木町の馴染みのバーに顔を出す。いつものようにここでは自分が一番の若手で、皆さんの枯れた会話をぼんやり聞いて過ごす。テレビ(音は消してあるけど)で2025年に大阪が万博開催に立候補するというニュースが流れると、誰もが「今どき誰が見に行くんだ」「6兆円の経済効果なんか、あるわけない」と突っ込む、突っ込む。「世の中年寄りだらけになって、そんなのが何万人も集まれば、倒れる人ばっかりだよ」という御仁がいて、その通りと言いたくなった。3杯飲んで虎の子へ移動することに。

 9時台に顔を出すのは久しぶりで、Tちゃんの46歳のバースデーを皆さんで祝っていた。以後、肩の凝らない話をしてゆっくり酒を飲み、気付けば1時過ぎ。寝不足が続いていたのでタクシーを拾って帰ろうと思っていたのだが、稼ぎ時なのか、空車がやって来ない。そのまま山手通りに出てしまい、そうなるとわが家まではあと2km足らず。結局歩いて帰ることになってしまった。日ごろの運動不足がたたり、歩いているうちに足が痛くなった。


10月12日(水) 薬局で耳を澄ます 

 薄曇り、23℃。

 午後イチ、不動産広告をやっているデザイン事務所のディレクターから新規案件の依頼があった。話を聞くと、先に入っている仕事とほぼバッティングするスケジュールで、1カ月ははばたついてしまう。正直いって気乗りがしない案件でもあり、恐縮ながらお断りする。まあ、いいか。

 午後、西新宿の大学病院にてアレルギーの原因を特定するため、生体検査を受ける。先週は予約にもかかわらず1時間20分待たされたが、今日は10分遅れ。まあ、いいか。血液検査の結果は問題なしとのこと。つまり、現在の症状が内臓の機能障害から来るものではないことだけは分かった。ただし、先生いわく「血液検査だけでは、はっきりは分かりません。なので生体検査がベスト」なんだとか。部分麻酔が打たれ、1cmほど切開して皮膚を切り取り、縫合するまで20分。実に丁寧な説明と扱いで、安心して手術が受けられた。

 痛み止めと化膿止めの薬を受け取るため薬局に行くと、先の男性患者が窓口で揉めている。「やり方がいい加減だ。責任者を呼べ」とか、なんとか。相当苛立っているようで、次第に声が大きくなっていく。薬剤師はちょっと青ざめたふうで、どこかとの間を行ったり来たり。最初はモンスタークレーマーかとも思ったが、耳を澄まして聞いていると「俺は毎月薬をもらいに来ている。この間は薬を変えるという指示がないのに、薬が変わった。今度は同じ薬なのに2回連続で金額が違う。どうなっているんだ」。うーむ、その言葉が本当なら男性患者の方の主張が正しい。揉め事は10分ほど続いたが、どこで折り合いが着いたのかそのうち男性は帰っていった。話の続きが聞きたーい。

 帰宅して次の仕事のための資料読み込みを夜中まで。手術といえないほどの手術ではあったが、今夜だけは酒を控えなくてはいけない。超薄い焼酎の水割りを飲んで、寝ることにした。


10月14日(金) タラバガニと牡蠣に惚れる

 曇って19℃。

 ひねもす、次の仕事の下調べ。本を読み続けるのも体力と集中力が要るもので、3冊読み飛ばすのがせいぜい。仕事に飽きて9時過ぎに虎の子へ向かう。本日はご常連Hさんの誕生パーティと牡蠣パーティが一緒になったため、店に着くなり、生牡蠣が出された。本来の旬よりちょっと早いそうだが、おかげで若々しい味が楽しめた。また、Hさんは昨日まで函館に出張されていたそうで、お土産にとタラバガニを差し入れてくれた。冷凍物は食べたことがあったが、生は初めてで、濃厚だが、肉がさっぱりしている。美食三昧で、堪能させていただいた。

 三々五々皆さんがお帰りになり、後片づけが終わったのは1時半過ぎ。もう少し飲みたくて、アルバイトのSくんとツマの3人で近所のモツ鍋屋に向かう。が、お隣に大学生らしい集団が10人居座り、うるさい、うるさい。男女の割合が揃ったもので張り切っているんだろうが、耳が疲れるほどである。疲れ果てたツマが怒鳴りはしないかと、ヒヤヒヤした。

 Sくんとは20歳も年が離れているが、いろいろ苦労しているのか、話がしやすい。それに目が輝いている。自分にも30代があったことはあったが、あんなふうだったかな。ずいぶん食べて飲んでしまった。明日は体重計に乗るのがこわいっす。


10月18日(火) 恵比寿で高ーいシャンパンをいただく 

 薄曇り、26℃。

 朝から資料集め。今週予定の仕事がクライアント事情で進められず、することがない。まいったなぁと思っていたら、近所の代理店から新規案件の依頼があった。それも、けっこうなボリューム。ありがたいことである。

 夕方、恵比寿へ。とある親睦団体のご招待で、駅近くの眺望がいいレストランで食事をする。某団体の会費は年間400万円ほど、同席される方も名士ばかり。そんな皆さんと席を並べて食べるのははなはだ苦手なのだが、しょうがない。最初に出てきたシャンパンは店では20000円ほどで出されているそうだが、オーナーからの差し入れ。まー、おいしいこと、素晴らしいこと。泡の弾け方まで上品で、洗練されておりました。その後も飲み放題ということで、知らないフランスワインを皆さん、しこたま飲まれておりました。料理は魚介メニューが続々。ウニが乗っかった前菜と、アクアパッツァのスープでつくったリゾットが最高だった。

 皆さん、どのような会話を交わされているかというと、スキーは娘と一緒にアルプスで覚えましたとか、ニューヨークの何とかというギャラリーは趣味がいいわねとか、海が見える温泉旅館で10日間ほど絵を描いて過ごしたいがいいところはご存知ないですかとか。うーん、どれひとつ話題に加われそうにない。で、笑顔でうなずくしかなく、そうしていたら「ずいぶんお静かね」などと言われてしまった。いや、そうではないのですよ。

 3時間飲み続けて、最後は若干酔っぱらってしまった。例年だと2次会にカラオケに連れていかれるのだが、今年は親睦団体の会長、副会長が同席されたので無事回避できた。時刻は10時。まだ早かったが、緊張が溶けた途端に酒が回ることはさんざん経験済みなので、お行儀良く帰宅。焼酎を飲みつつ、映画を見ていたら1時過ぎに寝てしまった。


10月19日(水) 抜糸する 

 晴れて23℃。

 先週生体検査の手術を受けた傷口を抜糸するため、8時半に大学病院に行く……つもりで7時半に起きたら、午後1時に変更になったことを直前になって思い出す。何をやっているんだかねぇ。前倒しして9時から仕事をスタート。昼過ぎに病院に出かけ、糸をチョンチョンと抜いていただく。すぐさま戻って仕事を再開。5時半から近所の代理店にて某ギフトカタログの打ち合わせに入る。なかなか興味深い内容で、こちらから企画提案もでき、うれしいことに年1回ながら定期物になる由、素晴らしい。先週気乗りしない仕事を断って正解だった。

 帰宅後は夜中まで別件の下調べ。江戸時代に始まった蕎麦、うなぎ、天ぷら、寿司の資料を読んでいたら、皆、町人文化が発展した文化年間(19世紀初め)に流行したものだったことを知る。質素倹約を強いられた寛政の改革が終わったこと、大きな天災がなかったこと、そして、それまで関西からの下り物しかなかった醤油が房州の銚子や野田で、味醂が流山で盛んになったおかげで、鰻をタレ焼きにしたり、味噌と大根おろしで味わっていた蕎麦切りを今と同じように食べられるようになった。なるほど、なるほど。

 気分をよくして1時に仕事を切り上げ、以後、焼酎タイムに。運が向いているのかなとぼんやり考え事をして、2時過ぎに就寝する。

  
10月22日(土) 歯医者に褒められる


 曇って18℃。



 このところは病院通いばかり。本日は午後3時、歯医者へ出向く。1カ月ちょっとかかった被せ物の最終チェック。傷み、違和感ともなく、わずかに残っていた歯石を取ってもらい、終了。「磨き残しはありません。いいですね」と褒めていただく。あー、すっきりした。

 その後は新規案件に関する調べ物をあれやこれや。納期を考えると早めに企画の枠組みだけでも決めておきたいのだが、代理店から音沙汰がなく、時間ばかりが過ぎていく。どうしたものやら。
 
 夕方から建築設備関係のカタログ、最終原稿を書き始める。おそらく最終稿となるため、修正指示があった個所以外も念入りに読み直し、手を加えていく。夜中、原稿書きに飽きてしまったので酒を買いにコンビニへ。新規案件に関わる商品(食べ物です)が陳列されていたのだが、なかなかよいお値段。ふだんならまず買わないのだが、仕事がからめば食べないわけにはいかない(食べたからといって、いいコピーも書けないのだけど)。2つ購入し、自宅で焼酎とともに味を確かめる。某シリーズ、初めて食べたのだが、結構な味じゃないですか。高い値段でも人気が出るのも分かる。よかった。これで納得した上で原稿が書ける。


10月29日(土) すすきので日ハムの優勝を祝う

 晴れて雪がチラついて、5℃。札幌の話ですが。
 
 昨日から北海道に帰省。昼過ぎまで家族・親戚関係の細々とした用事をすませ、千歳辺りを車で走っているときに雪が降り始めた。どうりで寒いはず。10月末に初雪が見られるとは、ラッキーだ。先に連絡を取っていた高校時代の友人3人と17時に札幌駅で合流、ビルの居酒屋で小さなクラス会を開く。このメンバーで再会するのは、10年ぶりだろうか。ケアマネージャー、中小企業診断士、電力関係の会社社長。仕事の内容は詳しく分からないが、皆、自分の居場所を見つけて活躍しているよう。明るい表情を見ると、ちょっと羨ましくもある。

 3時間があっという間に過ぎ、10時の特急列車で帰る友人を見送り、残り3人でスポーツバーへ。が、店内のテレビで日本シリーズの優勝がかかって試合を中継していたため、お客さんが、盛り上がる、盛り上がる。おかげで声がよく聞こえず、どなるようにして話していたら、のどが痛くなってしまった。9時過ぎの電車でまた友人が帰り、残った2人ですすきのへ。同級生のお姉さんがやっているスナックでもテレビ中継がされており、優勝が決まった瞬間、居合わせた知らないお客さんとハイタッチする。プロ野球の試合は久しく観ていなかったが、今年の日本シリーズは男と男のぶつかりあいが見られて愉しめた。こういうのが続けば、プロ野球人気がもっと高まるのになぁと思う。おかげさまで、忘れられない一夜になりました。

 12時過ぎにタクシーでホテルへ。どうやって帰ったかは分からないが、気付けばホテルで寝ていました。